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N’s Kitchen**&labo
小池 夏美 さん
社会の中の自分
10年あまり看護士をしていたなっちさん。
結婚を機に退職し、専業主婦になった。子育ての傍ら、空いた時間に雑誌に載っていたレンジ発酵のパンを作ったことをきっかけにパン作りに熱中するように。パンを作っておうちカフェにお友達を呼んだり、ブログで作ったパンをアップしたりして周りの反応を見ることが楽しかった。
看護士時代は仕事を通じて社会的に人との繋がりを感じていたが、専業主婦になるとどこか閉ざされたように感じていた。しかしブログを見てもらうことで自分の居場所ができ、インターネットを通して世界は広がった。クックパッドやコンテストにも積極的に応募し、掲載されたり、賞をもらったりするたびにやりがいも増えたように感じた。
公民館の朝市での販売がイベント参加へのスタート
自分の作ったパンを誰かに食べてもらえる、想いを届けられることがパン作りの糧となった。
そんな時、お義母さんが倒れ、同居、介護をすることになった。費やせる時間が減ってしまうが、今まで培ってきたパン作りを断念することはできなかった。当初はご主人の地元、興居島に移住する予定だったため、興居島にも程近い三津に引っ越し、お店を出すことになった。地域の方々にも助けてもらいながら、店舗の改装も自分達の手で行った。また、イベントで知り合ったしましま雑貨店さんにもお店の一部で雑貨の販売をしてもらうことになり、人との縁を感じずにはいられなかった。
最初は週1日の販売からスタート。決してパン作りの製法や方法を教えてもらったわけではない、しかしそれを逆手にとって手間暇かけて、じっくりパンと向き合って作ることは大事にしていたという。その熱い想いに応えるかのように、客足は増え、そのことがパン作りの励みになった。3年前、ご主人も退職し、お店のマスターとして加わったことをきっかけに営業日を週4日に増やした。それまではおうちパン屋として活動していたなっちさん。家庭用オーブン3台で焼いていたため、業務用のオーブンを購入することも考えたが、周りにどう思われるか、費用のことも
考えると、怖くて決断ができなかった。そんな時ご主人の一声でオーブンの購入を決意した。購入前の不安はパンを作っていくにつれて吹き飛び、焼いたパンをさらにお客さんに喜んでもらえるようになった。業務用オーブンを使うことは、むしろ自信になった。
パンは愛情表現、お店は交流の場
今ではお店のオープン前には行列ができ、イベントに参加しても即完売となる大人気のなっちさんのパン。パンは愛情表現のツールだと語る。「なっちゃんのパンは美味しい」「ここにしかないパンを食べたい」そんなお客さんの声は活力源になっている。自分も作っていて楽しく、自分の食べたいものを、食べてもらう人のことを考えて作る。その想いはお客さんにも伝わり大事に食べてもらえていることが嬉しいと語る。
三津の商店街の中ほどに位置しているお店には、子連れで訪れるお客さんも少なくない。
かつてなっちさん自身が子育て中に感じていた疎外感、孤独感を少しでも取り除いてもらいたい、社会と繋がりながら自信を持ち、居場所を感じて生活に張り合いをもってもらたいと教えてくれた。お客さんとのやりとりで元気をもらいながらパンを作っている、と笑顔で語っていたなっちさん。
一人でパンを焼いているため、時間も手間暇もかかる。2人の子育てと、義母の介護との両立も決して楽ではない。
しかしパン屋として、母として、妻として、娘として、自分にしかできないことを精一杯やりたいと語る。行き詰ったときは考え方を変え、違う角度から自分にしかできないアプローチをしてみる。『ピンチはチャンス』という言葉があるが、新しいものに出会うことができるチャンスなのだと前向きに語る。捉え方で、気持ちの持ち方で世界は変わる。何事も前向きで笑顔でいることで、パンを通してお客さんにも笑顔の輪を広げている。
SHOP DATA
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- 屋号
- N's Kitchen**&labo
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- 所在地
- 791-8062 愛媛県 松山市 住吉1丁目3-33
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- 電話番号
- 090-1577-4114
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- 営業時間
- 11:00〜16:00(定休日:月、木、日)
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- Webサイト
- http://nacchi0605.exblog.jp/
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- https://twitter.com/nacchi0605
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- http://www.instagram.com/nskitchen_labo/
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- 備考
- 愛媛県の港町、三津浜。レトロな商店街でひと際目を引く外観。自家製天然酵母を使ったハード系をはじめ、惣菜パン、スイーツパンや焼菓子など、約25種類がディスプレイのように並ぶ。まるで宝箱のようなフォトジェニックな空間には雑貨やさんとカフェが併設され、乙女感たっぷりの至福時間を過ごす事ができる。